HeartMask

 ハートマスク運動の応援団

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京都産業大学 鳥インフルエンザ研究所長 大槻公一教授

インタビューは京都産業大学 鳥インフルエンザ研究所にて、
2009年8月25日におこなわれました。
聞き手:協会 理事長 田尻良  理事 蓮井真弓

大槻先生NPOの認可が下りてよかったですね。
日ハ協会 ありがとうございます。
でも結構大変だったんですよ。マスクを広めるために、「咳をする人こそマスクをしよう」また「マスクを人にあげる文化を育てましょう」という運動が大切だっていう考えが、なかなか理解されず、単にマスク販売の営利目的じゃないの?っていぶかしがられて・・・。「この運動には鳥インフルエンザ研究所長の大槻先生にご賛同いただいているんですよ」と説明して、ようやく納得いただいた次第です。

大槻 NPOの性格自体をよく理解できてない人が多いですよね。
僕なんかも公益法人をイメージしてしまいがちで・・・。
協会 実際のNPOは民間の知恵とお金を集めて活動する団体で、たとえ活動を通じて利益が出ても外部に分配せず、その活動にのみ再注入するものですから公益性が高いんですが、その辺が理解されにくいんでしょうね。
私たちはマスクの無料配布だけでなく、ゆくゆくは学校など公の施設に出向いて、無料でセミナーを開いて大切な命を守るハートマスク運動を全国に広めていきたいと考えています。

ところで、そろそろ新型インフルエンザの正体が判ってきたんじゃないかと思ってお伺いしたんですが・・・。特に若い人、例えば高校生がインターハイや合宿で集団感染することが増えていますよね。なぜでしょう?
大槻 そうなんです。家庭で広がらないものが、なぜ部活では一気に広がってしまうのか? どんな条件がそろえば人から人へと感染するのか、私も聞きたいくらいなのです。
協会 部活ということなら、たとえば、ペットボトルの回しのみも感染の原因のひとつですかね?
大槻 あるかもしれませんが、実際にはどんなウイルス量をどの程度の風速で飛ばすかなど、細々とした同じ条件下でいろいろ実験してみないと簡単にはわからないですね。
協会 ペットボトルとは言ってみましたが、2〜30人が同じ一本のペットボトルを回しのみするなんて考えられませんもんね。はやり咳をしている生徒がいるからかな?
大槻 集団感染した生徒たちに、どんな生活をしているなかでうつったのかを聞き取り調査して、共通点をさぐらないと見えてこないですね。 そういえばこの前、ある企業さんに聞いたのですが、「喫煙室が感染の場になっているんじゃないか?」って。
協会 ああ、いかにも危なそうですね。密閉されているし、狭い空間ですものね。
大槻 たばこの煙の中には、話す時の唾液が混じって飛んでいるんですね。臭いが染み付くくらいだから、呼気が直接身体にかかると接触感染するかもしれないですね。
協会 喫煙者は免疫も落ちがちだろうし、喉の粘膜もあれているでしょうね。
大槻 今回の新型インフルエンザでは、不顕性感染が危険だと言われているんです。 かかっても、発病しないまま体内でウイルスが増えるタイプですから、本人は熱もでず、咳もせず、知らず知らずのうちにうつしてしまっているんですよ。
関西で初期に集団感染した高校で最近生徒500人を採血して抗体を調べたんですが、これで不顕性感染のことがわかってきたんです。
しかし、それなら季節性インフルエンザでも昔からあった話なんですよ。僕自身も大学生のときにタコ部屋のような寮の中で5人中4人が次々と倒れたにも係わらず、なぜか自分だけが倒れずに、使いっぱしりをさせられたことがあるんですよ。だから、昔から、どうしたら発病するのか、しないのかが判らないなまま。
僕が思うに、小学校4年生のときに酷いインフルエンザにかかって、死ぬ思いをしたことから重症化しないのかもしれません。このときの株はスペイン風の仲間のはずなんです。
協会 学校の調査結果が出れば発症率もわかるし、どんな人が抗体を持っているかどうかも判るんじゃないですか?
大槻 発病していない人がワクチンを打ったからかどうかを調べることもできますね。
協会 ワクチンといえば、厚労省が副作用の件でワクチン接種の義務化をやめて以来、自費でワクチンを打つ子どもさんは少なくなったんじゃないですか?結構高いし。
大槻 値段も病院によってまちまちですね。
協会 義務化されてないので、一律の値段ではなく、任意で料金が設定できるようになっているんですよね。
大槻 保険が適用されないというのが問題なんです。

協会 保険適用して欲しいですよね。
そうそう、病院ですが、病気を治しに行って感染してしまうほど、理屈に合わないものはないですよね。
大槻 患者さん同士の感染だけでなく、医療従事者が患者さんからうつされたという例がこのまえ名古屋でありましてね。新型インフルエンザの3例目で、亡くなった81歳のおばあさんからなんですが、思わずSARSを思い出しました。あの当時も医療従事者が感染して、かなり亡くなりましたからね。
協会 医療関係者がどうしてでしょうかね?そういえば5月のピークが過ぎ去って以来、病院で先生や看護師さんのマスクが減りましたよね。
大槻 終息宣言で、マスクをしない方向に戻ってしまったのかもしれないですね。 日本中が感染病の基本的な対策をすっかり忘れているんです。大阪が大騒ぎをしていた時も、県境を越えると、なんとなくどこ吹く風で、こちらには来ないだろう的な、他人事的なムードがただよってましたね。
協会 何を根拠に県境を越えないと思ったんでしょうね。
大槻 行政も自分の区画しか担当しないから、周りをみるという習慣がないし、所管に縛られているぶん、大事な情報の伝達が遅れる。ハートマスク協会さんがマスクの啓発をされるなら、是非、行政や医療現場も意識改革が必要なことを強く知らしめてほしいですね。
協会 がんばります。でも医師でもないのに医療関係者にセミナーするのは、なかなか受け入れてもらえないでしょうね(笑)

今回の新型インフルエンザはさきほどの不顕性感染が大きな役割を果たしているのですか?
大槻 いや、今のところ、それはほんの何割かだと思いますよ。それよりもやはり学校が大きいですね。
学校からは感染したら知らせるように通達をしていただろうけど、夏休みに入ったことで、子どもが具合悪くても学校への連絡が実行されなかったフシがありますね。学校が始まったら大変だよ・・・って言われていたとおり、登校してみて始めて、インフルエンザの流行に驚いた家庭が多かったようです。
協会 夏休みなら、学校へ連絡しないほうが当たり前に感じるのかもしれませんね。感染者の数が少ないうちはイジメにつながると考える親御さんもいるでしょう?それと、咳をしていて多少熱があっても、ウチの子は違うだろうと思いがち。それで、少しくらい調子が悪くても登校させるんじゃないですか?
大槻 5月当初、国外から帰国された人に空港で厳重な検疫体制が敷かれたでしょ?大げさすぎるって笑う人もいましたが、あの検疫体制で深刻さを認識して感染者が早く見つかったんですよね。やはりよほどのインパクトを与えないとだめです。 一度終息宣言が出されたあとなら尚更です。連絡を待っているより、攻めの情報収集をさせるように、国が動くべきですね。
協会 なるほど。あの時はインパクトがありましたよね。

では今度は予防についてお伺いしたいのですが、結局マスクと手洗いやうがいなど、一般的に言われているものでしか予防できないんですか?
大槻 アメリカのCDCではマスクには感染を防ぐ効果はないと言ってるんです。ただ、飛沫感染を防ぐには有効なので、感染者本人がマスクをするのはいい。それでアメリカでは発病している人しかマスクをつけていないので、予防でマスクをしている日本人が変な目でみられるのが現状です。また、この考えに同調してマスクは意味がないと言っている日本の医療関係者も多いんですが、私は絶対、効果があると思っています。
ウイルスそのものは単独では存在せず、必ず水滴の中にあるものだから、そのシブキを100%は無理でも90%程度マスクでブロックすれば、感染予防の効果はでるでしょう。

また習慣づけについて、日頃健康を気遣っている人や花粉症の人、中でも女性は割りとマメにマスクをしてらっしゃいますよね。でも私たち男性はマスクをするのに馴れていないんですよ。そこでこの時期マスクをしなければいけないという特別な意識をもつことで当然、衛生への関心が強くなりますよね。そこからマスクをしているんだから、ウチに帰ったら手洗い、うがいもしようという気持ちが起こるんですね。
協会 普段忘れがちな手洗いやうがいも、マスクとセットで習慣づけできるので、マスクの役割は大きいということですね?
大槻 そう、マスクは基本ですね。それからもっと完璧を喫すなら安全性の高い消毒薬を全身に振りかけること。玄関で洋服に噴霧して、ウチの中にウイルスを持ち込まないことですね。
協会 具体的にどんな消毒薬がいいんでしょう?
大槻 塩素系が多く使われていますが、洋服が剥げてマダラ模様になる恐れがあるので注意した方がいいですね。
協会 他にはどんなものがありますか?
大槻 以前鳥取大学の研究に参加したときに開発した消毒剤があって、成分は大豆から抽出したアミノ酸が主体のもので、消臭剤として使えるものがインフルエンザの予防にも効果的なことが判ったんです。名古屋の会社のもので、名古屋市の交通局や全日空が使っているよい商品なんですが、ちょっとお高いんです。
協会 でもやっぱり、ちょっとくらい高くても、安全で効果があるものを使いたいですね。もちろん安いほうがありがたいけど(笑)

消毒といえば、接触感染を防ぐために、あちこち消毒しないといけない訳ですが、ウイルスは付着したものの上で、どのくらい生きているんですか?
大槻 それをよく聞かれるのですが、衣服の上と皮膚の上では温度が違うし、難しいんですよね。
協会 そうかぁ、そりゃ条件次第で全然違うでしょうね。
じゃぁ飛沫についてはどうですか?2mくらい飛ぶって聞きますよね。
大槻 あれはNHKがくしゃみの飛ぶ距離を測ったもので、ウイルス自体を飛ばしたわけじゃないから、はっきりは言えませんけど、まぁ唾液の飛ぶ距離はウイルスも飛ぶだろうという想定で、2m以内の人は危険かな?と。
協会 でも、空中に浮遊していた場合であれば、2m以内なんて必ずウイルスがいますよね。
大槻 まさにそのことが今回の新型インフルエンザで新たにわかったことでね。
今までは、たとえばアメリカから日本へ帰ってくる飛行機の中では10時間程度一緒の空間にいますから隣の人はまず感染するだろうと思われていたんですが、なんと発病しなかったんです。おそらく空気の流れが上から下へとまっすぐに下りて横には流れなかったというのがうつらなかった理由だったんじゃないかなと思っています。
協会 気流に相当影響を受けていると言えそうなんですか?
大槻 おそらくお客さんが乗っている場合の気流の動きと乗っていない場合の気流の動きとでは違ってくるだろうし、飛行機の中はかなりウイルスが生き延び難い環境になっているのかもしれません。あくまで仮定ですが・・・。実験したくても飛行機が使えなくなるんじゃあ無理も言えませんし(笑)
協会 飛行機を丸ごと借りたら、お金かかりそうですもんね(笑)

じゃあこんどは、マスクについて教えてください。どんなマスクをしたらいいでしょう?
大槻 5月にはガーゼのマスクが売れ残りましたよね。ガーゼマスクはウイルスを通してしまうなんて噂がたったからなんですが、ガーゼのマスクでもちゃんと飛沫を抑えてくれるんです。ただ、マスクの捨て方には注意が必要です。マスクの前面がウイルスの巣窟になっている可能性が高いので、ウイルスが生き残っていることを考えて処分しないと。
協会 じゃあそのまま家庭ごみに出してはいけないんですか?
大槻 ウイルスは何時間生きているのか判らないので、熱湯をかけて瞬間的にウイルスを殺してから捨てるのが、よりいい方法ですね。必ずひと手間かけるべきです。
協会 なるほど。マスクを選ぶときのコツはありますか?
大槻 それは使っているうちにおのずと消費者が優劣をつけることになるでしょうから、いま、これがよいというものはないですね。それよりもどんなマスクでもかまわないので、マスクをすることが大切だと意識付けをすることが大事じゃないですか。
協会 マスクの着用がエンドではなくて、そこが安全へのスタートであることを広めていくのが、協会の使命ですね。
大槻 被害者でなく、誰もが加害者になうる重大さをみんなが気づくように訴えかけることを目標に、運動をがんばってください。
協会 がんばります。
今日はありがとうございました。